その1 その2 その3 その4 ←いまココ
その5 その6 その7 その8
※ちょいグロがあるからそれ系が嫌いな人は読まん方がいいかと。
※この物語はフィクションです。実際の人物や団体には一切関係ありませんよ。
196 :1:2007/01/07(日) 20:00:32.90 ID:s936oG6t0
ドアの向こうで、言い争う声が聞こえた。
拓朗の怒鳴り声。ミサキの声。怒っている時のミサキの静かな声。
マミが危ない。直感で、そう思った。
リュックの中をまさぐる。昨夜のうちに弾を詰めておいた小銃、
カラシニコフ。小型なのに威力はあると兄が言っていたのを思い出す。
僕は個室のドアを急いで開け、便所と廊下をつなぐドアのガラスを狙って、撃った。
ドアの外には、ガラスの破片が少し刺さって、顔から血を流している拓朗。
壁に張り付いて呆然としているマミ。
そして、血を流して倒れこんでいるミサキ。
どうやら、僕はマミを助けてみたいだ。
安心した。僕はマミの肩を叩く。
「お互い生きてて良かった、マミ」
マミは固まっていた。
無理もないか。いきなり弾がとんできたんだもんな。
僕がマミの立場なら驚いて腰が抜けているに違いない。
「……ヒカル?」
足元から声がした。静かな、震えた声。
「光なの? もう少しで止めをさせたのに、邪魔をしたのは光なのね?」
早口でミサキが何か言っている。
「死なないよ。私、貴方達を殺して、生き残るよ。絶対、生き残るんだから!!」
突然、強い力で手を引かれた。
僕とマミはA階段側に倒れこむ。
「マミ! 玉橋! 危ねぇ!死ぬぞ!!」
拓朗の怒鳴り声。どうやら拓朗が僕らの手を引っ張ってミサキから引き離したらしい。
197 :1:2007/01/07(日) 20:01:51.98 ID:s936oG6t0
「逃げよ!」
「そうだな! とにかく、逃げよう!!」
マミはA階段を登っていく。拓朗もそれに続く。
……確か、3階は12時5分から禁止エリアのはずだ。
「逃がすか! 待て! 殺す!! 殺す!!」
肩から血を流しながら、ミサキがこちらに向かってくる。
普段なら絶対見せない鬼のような表情だ。
一度だけ、こんな表情をしたミサキを見たことがある。
確か小学校の時、瞳と殴り合いの喧嘩をしているミサキはこんな顔をしていた。
迫ってくるミサキから逃げるべく、僕もA階段を登る。
登っている間に、気付いたことがあった。
……銃を、落とした。
拓朗に腕を引かれたときに、職員便所の前に落としてきてしまった。
だが、取りに戻れるわけもない。ミサキが刀を振り回しながらこっちに迫ってきている。
198 :1:2007/01/07(日) 20:02:13.85 ID:s936oG6t0
A階段を登りきる。
拓朗とマミは、理科室の扉の前で隠れるようにうずくまっていた。
「マタマ! スケミは来てるか!」
「聞かなくてもわかるでしょうが!!」
マミの問いかけに拓朗が叫ぶ。
それもそうだな。わかるな。
さっきから叫びながら階段を登っていたミサキは、もう僕達の目の前に居るのだから。
「……光。あんた、許さないから」
静かに言い放つスケミ。
絶体絶命って言葉の意味を、身をもって知った瞬間だった。
ピピピピ ピピピピ
ピピピピ ピピピピ
199 :1:2007/01/07(日) 20:02:43.43 ID:s936oG6t0
単調な電子音がすぐ近くから聞こえた。
皆、自分の首を見ていた。
その音は首輪から鳴っていた。
「畜生、3階禁止エリアじゃねぇかよ!」
マミと拓朗は立ち上がって、A階段へ走る。
だが、ミサキが立ちふさがった。肩で息をしながら、不適に笑っている。
「駄目だよ。あんた達はここで死ぬの。しかも首の爆弾でじゃなくて、私に切られて死ぬの!!
アハハハハハハハハ!!」
刀を振り上げるミサキ。動きが止まっているマミと拓朗。
そして、勝手に動く、僕の体。
僕は、確かに弱虫だ。
皆からからかわれる。豚とかデブとか言われる。でも反抗出来ない。怖いんだ。負けるのが。
でも、変わろう。今、僕はあの二人を助けよう。
弱虫でも、出来ることがあるんだ。それを証明してみせる。
かっこよくなるんだ。
皆を、見返すんだ。
200 :1:2007/01/07(日) 20:03:07.93 ID:s936oG6t0
僕は、ミサキの体に思いっきり体当たりをかました。
スケミと僕は家庭科室の方に転がっていく。
「な、何すんのよ!」
ミサキは怒鳴る。わめいている。僕はミサキの体をがっちりと抑える。
「放しなさいよ! 生意気なんだよ! 死ね! 消えろ! クズ!」
怒鳴り散らすミサキ。でも僕が抑えているから、動けない。
死ぬ気でミサキの動きを止めて、僕は叫んだ。
「行って! マミ、拓朗!! 行って!!」
ピピピピ ピピピピピピピピ
電子音が早くなっている。
拓朗とマミが階段の方へ走っていく。
あー、これで僕の人生、終わりか。
僕、かっこよかったかな。マミの助けになれたかな?
A階段の前で、マミが立ち止まっていた。
「マミ、何やってんだよ! 早く行けよ!」
しだいに大きくなる電子音に負けないような声で、僕は叫んだ。
僕は、マミを助けるんだ。
僕が、マミを助けるんだ。
脇腹が痛い。ミサキが、刀を持って、死に物狂いで刺していた。
痛い。熱い。痛い。生まれて初めて味わう。痛み。
僕は転げまわった。だけどミサキの体を離さない。
201 :1:2007/01/07(日) 20:03:44.65 ID:s936oG6t0
「行って!!」
「マタマ!!」
マミが泣いている。
「ありがとう!!」
僕はミサキを放し、マミの方へ走る。
そして、突き飛ばす。
マミは階段を転げ落ちていった。
「……またね」
電子音が、途切れた。
【20人】
補足:マタマは少しウホッ気味な奴
202 :1:2007/01/07(日) 20:04:53.17 ID:s936oG6t0
<訪問>
かなり大きい爆発音で、私は飛び上がった。
そしてドアの方を確認した。
……良かった。誰も居ない。
教卓にふらふらと座り込む。
疲れた。怖くて寝ることが出来ない。
ユカが殺される放送。遠くから聞こえる銃声。そして今の爆音。怖すぎる。
鼻水が出そうになり、私は後ろのロッカーに入っていた箱ティッシュを使った。
1年4組に、私植木結は篭っている。
目覚めたのも1年4組。
寝ずにずっと机の陰に隠れていた。
あーミキカ、何やってるのかな。生きてるかな。
誰かと喋りたい。出来ればミキカが良いな。
「植木ー、生きてるかー!」と声をかけて欲しい。
そして「うるさい! お前なんて死んでれば良かったんだ!」みたいな感じで少し口喧嘩して。
一緒に行動したいな。
実はあの扉のむこうから、覗いてたりしないのかな。
私は、もう一度扉のガラスを見てみる。
誰も居ない。
203 :1:2007/01/07(日) 20:05:24.78 ID:s936oG6t0
むしろ居ないほうが良い。ミキカが居るなんて限らないし、殺される確率の方が高いから。
憂鬱だ。私みたいな人が、殺し合いなんかで生き残れるわけもない。
でももしかしたら、ずっとここに隠れれて気がついたら最後の一人になってる、みたいなことがあるかも知れないな。
そうだと良いな。死ぬのはとても怖い。まだこの世には未練がたくさん残っている。
「植木ー」
扉が音をたてて開いた。
私は声をあげて驚いてしまう。そして無意識に扉の方を見た。
「……ミキカ?」
「いや、岩崎じゃないよ」
低い、だけど優しい声。
小松友也が居た。
片手にリュックを持っている。彼は私に微笑みかけた。
「生きてるか?」
「う……うん」
大丈夫だろうか? 小松のことはあまりよくわからない。
無口で、前田と蔵根といつも一緒に居て、バスケ部だ。
そのくらいしかわからない。良い奴なのか? 私を殺さないかな?
204 :1:2007/01/07(日) 20:05:55.21 ID:s936oG6t0
小松は私の方に近づいてくる。
私はそれにあわせて後へ下がった。
「い、いや。俺武器持って無いから。安心して」
小松はホールドアップする。
頭の中では、大丈夫、小松は殺さないと主張する自分と、いやいや安心させて殺す気なんだと叫ぶ二人の自分が喧嘩していた。
「俺さ、武器でおにぎりが5個当たったんだ」
「え?」
小松がいきなり話すので、聞き取れなかった。
「いや本当に。武器の変わりにおにぎりが5個入ってたんだ」
「え、本当?」
さっきから声が震える。だが小松に私を殺す気はなさそうな気がしてきた。
小松はリュックの中をまさぐって、アルミニウムでまかれたおにぎりらしき物体を2個とりだした。
「だから、おすそ分けに来たんだ」
毒。
毒だ。
毒なんだ。
私の頭の中の自分が猛烈な勢いで叫んでいる。
落ち着け私。普段全然私と話さない小松が、善意でおすそわけにくるはずなんてない。ありえない!
私を毒殺するつもりだ。絶対そうだ。
どうしよう。どうやって断ろう。
205 :1:2007/01/07(日) 20:06:18.75 ID:s936oG6t0
「いや、毒は入って無いよ。俺すでに2個食べたし。なんなら毒見しようか」
おにぎりのアルミニウムを剥がすと、小松は一口それを食べて見せた。
「大丈夫」
そしてその一口食べたおにぎりと、まだ包まれているおにぎりをを私に手渡す。
「植木になんの恨みも無い。殺すわけないじゃん」
お腹が鳴った。そういえばこの殺し合いが始まってから何も食べていない。
そして何故か涙がこぼれてきた。
私は猛烈な勢いでそのおにぎりにかぶりついた。
味はあまり感じない。少ししょっぱいのを感じる。だが、おいしかった。
「良かった。やっぱり、コッペパンだけだったら腹減るよな」
私の顔を見ながら小松は微笑んだ。
206 :1:2007/01/07(日) 20:06:47.92 ID:s936oG6t0
私は30秒と立たないうちにそのおにぎりを平らげた。
お礼が言いたかった。危険を冒してまでおすそ分けにきてくれた小松に。
だがあまり話さない男子にどうやって感謝の言葉を述べればいいのか、わからない。
「……わざわざありがとう」
「いやいや」
小松は一礼してから、ドアのほうへ向かって歩いていく。
そしてドアの前で立ち止まる。
「俺さ」
彼は振り返った。真面目な表情を浮かべている。
「こんな理不尽な殺し合いなんて納得いかないんだ。
だから、皆で助け合ってで生き残る方法を探したい。頑張って、最後まで生き残りた
いんだ」
そういうと、私の返事も待たずに小松は教室を出て行った。
あとには、呆然としている私とまだ手をつけていないおにぎりが一つ残された。
207 :1:2007/01/07(日) 20:07:26.42 ID:s936oG6t0
<半端>
「真玉橋光と祐川美沙希が禁止エリアに引っかかって死んだ」
PSPを見ていた館入が唐突に喋りだす。だがその唐突さにも慣れてきたところだ。
「……禁止エリアに? マタマはわからないでもないけど、スケミがひっかかるなんて信じられない」
「そこがバトルロワイアルの面白い所じゃん」
さっきの爆発音はそのせいか。ついさっき佐藤知香と潟端翔が長谷に殺されたから、これで生存者は20人か。
俺は窓の外を眺める。ごく普通の風景が広がっている。
自転車小屋の前に立っている木が風でゆれている。天気は昨日とはうってかわって晴天。
雲ひとつない。だが理科で先生が雲が無い日こそ寒いとか言ってたっけ。
「前田」
「何?」
館入の声がして、俺は館入の方を見る。
「今日は居眠りしないんだな」
「……お前、俺=居眠りとか思ってるだろ」
「そうじゃないのか?」
「馬鹿野郎、俺だってこんな非常事態に居眠りするような愚か者じゃないよ」
「そうだったのか」
館入は少しだけ微笑む。
奴の微笑みを久しぶりに見た気がした。
208 :1:2007/01/07(日) 20:07:44.90 ID:s936oG6t0
「さっきからヘッドホンつけて、誰を盗聴してるんだ?」
「近藤」
近藤、か。
確か館入は近藤にいじめられていた。
たまにブチ切れる館入が怖かったのを覚えている。
「で、何か面白いことやってるか?」
「うーん。予想通りの展開すぎてつまらないかな」
館入はヘッドホンを頭から外し、俺を手招きする。
俺は少しためらった。朝聞いた川原の渋谷殺しが頭の中に蘇る。
「俺……いいよ」
「そうか」
館入はヘッドホンを自分の頭にかけなおした。
俺は再び窓の外を眺める。
そういえば、人が全然歩いていない。
封鎖でもされているのか。
そんなことを考えた。
そのうち、睡魔が襲ってきた。
まぶたが重い。
210 :1:2007/01/07(日) 20:09:03.29 ID:s936oG6t0
<激痛>
畜生、畜生、畜生! 何で俺が。何で俺が。
こんなはずじゃなかった。
足があったところから血が猛烈に溢れ出す。
何で、そんな、嘘だろ?
「あー、ごめん。うちさっきそこに地雷置いといたから」
さっきから川原がそこで笑っている。
何も出来ない俺を見下して、笑っている。
ただ俺は湿布が欲しかった。
2回の給食室で隠れてると、何か体が熱っぽくなってきた。
風邪をひいた。体中が心なしかだるい。
そんで湿布をでこに貼って、熱を冷まそうと思った。
湿布はどこにあるか考えると、保健室が真っ先に思いついた。
だから、保健室へ向かった。
それだけ。
なのに、いきなり足元が爆発して向かい側の会議室に吹っ飛ばされた。
猛烈な痛み。やばい、敵が来る。死ぬ。殺される。
立ち上がろうとした。だが、立ち上がれない。
足が、無かったんだ。
足が根元からまるごとなかった。
211 :1:2007/01/07(日) 20:09:34.51 ID:s936oG6t0
「まさか保健室の入り口に地雷がしかけてあるなんて、思いもしなかったでしょ?」
川原は普段浮かべないニヤニヤ笑いを浮かべている。
こいつ、こんな奴だったっけ。可愛くて、頭が良くて、男子からモテる。そんな奴じゃなかったっけ?
「痛いでしょ? 苦しいでしょ? そりゃ足が1本ないんだもんね! 痛いに決まってるよ!」
急に俺の体を痛みが襲った。いや川原に気をとられていて痛みを忘れていた、と言った方が良い。
猛烈……激烈…死ぬほど…いや、そんな言葉でこの痛みを表すことはできない。
痛いのだ。とにかく、痛いのだ。生まれてこのかたこんな痛み味わったことがない。
俺は床をのた打ち回った。
「はははは! 無様だね! 私が手を下さなくても全然OKみたーい」
川原は保健室の方へ戻っていった。
「じゃあね弘幸。運が悪かったね。アハハハハハ!」
扉を閉める音がした。
ああ……誰かこの痛みをなんとかしてくれ。
足がもげそうだ。もうもげているが、痛い痛い痛い痛い痛い。
いっそ、誰か殺してくれ。
痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。
畜生! イテェ! 痛いんだよ!! 誰か、助けてくれよ! 痛いんだよ!!
212 :1:2007/01/07(日) 20:09:59.79 ID:s936oG6t0
突然、痛みがやわらいだ気がした。
視界が白くなっていく。
【19人】
214 :1:2007/01/07(日) 20:10:33.28 ID:s936oG6t0
<悪夢>
ボウガンを下ろした。
近藤はもう死んだみたいだ。
さっきまで狂ったみたいに床を転がりまわっていたが、今はもうピクリとも動かない。
ボウガンの矢は近藤の頭に刺さっている。
……瞳も、ひどいことするな。
琢磨を殺した私は、琢磨の荷物を自分のリュックに入れてあてもなく廊下を彷徨った。
誰も見当たらない。爆発の音と銃声はしたけど、それ以外は何も。
皆どこに居るのだろう? 教室の中に入っているのかな?
何だか、何もかもどうでも良くなった。
どっと、疲れた。
私は放送室の前のちょっとしたスペースに座った。そして眠りについた。
そして、夢を見た。
215 :1:2007/01/07(日) 20:11:01.38 ID:s936oG6t0
暗いところで、遠藤がこっちを見ている。
私は遠藤に近づこうとする。だけど、近づけない。
どんどん遠藤はそっちに行ってしまう。
どれだけ頑張って近づこうとしても、遠藤は向こうに行ってしまう。
……怖かった。
何だか、遠藤が死んだような気がした。
行かないで、行かないで! 遠藤、行っちゃ嫌だよ、遠藤!!
必死で叫んだ。でも無理。遠藤はどんどん離れていく。
そして、消えてしまう。
私は、暗闇にポツンと取り残された。
耳が壊れそうになるくらいの轟音。
暗闇から学校に戻る。
すると、近藤と瞳が居た。
217 :1:2007/01/07(日) 20:12:19.20 ID:s936oG6t0
話の内容から推測して、近藤は地雷を踏んで足が無いらしい。
狂ったようにもがいている。
英語の教科書で地雷を踏んだマラソンランナーが出てきていた。
その影響か、地雷を踏んでも生きられるのだ、と思い込んでいた。
だが、そんなに甘っちょろいものじゃないみたいだ。
確かに生きることは出来る。だが、激痛を伴う。
近藤を見て、地雷の恐ろしさが改めて感じられた。
でも、この感じは何だ?
すぐ目の前に死にそうな人がいるのに。
まるで映画を見ているみたいだ。
218 :1:2007/01/07(日) 20:12:44.30 ID:s936oG6t0
近藤を痛みから解放してあげた私は、ボウガンをポケットにしまった。
琢磨の血が少しだがこべりついている。
……遠藤を、探そう。
私は遠藤のことが、好きだ。恋愛感情とかじゃなくて、親友だ。
リュックを背負って立ち上がる。まず1階を探してみよう。それから2階を探そう。
神様、お願い。願いをかなえて。
「遠藤が、まだ死んでいませんように」
「あら、千明」
振り向かなくてもわかった。
だが振り向いた。予想通り。瞳だ。
「どこに行くの? うちにも教えてよ」
彼女は微笑んでいる。
大きい銃を抱えている。
体が、固まってしまった。
嫌、だ。死にたく、ない。
219 :1:2007/01/07(日) 20:13:25.55 ID:s936oG6t0
<放物>
何気なく木工室に入ったのは、やはり正解だった。
誰もいないし、凶器が山ほど存在したからだ。
ノコギリ、カンナ、鉄やすり。
その他大工用具色々。これで近距離の武器には不自由しないな。
あとは桂湖を探すだけだ。色々詰め込んだせいで少しリュックが重くなった。
私は机の上に寝転ぶ。普段なら怒られるだろうが、今は誰も居ない。少しだけ得した気分だな。
そうだ、私益田奈央は蔵根を殺したんだよな。
相変わらず殺し合いをしているという実感が沸かない。時計は2時をさしている。
もう殺し合いが始まって12時間が経つ。だけど、全然わからない。
夢じゃないかな。まだそう思う。とても長い夢。
そんなことありえないんだけど、でもそう思ってしまう。
……普通こっちの方がありえないんだけどね。バトルロワイアルなんて。
220 :1:2007/01/07(日) 20:14:23.55 ID:s936oG6t0
憲法が改正されたのは、親が言っていた。学級通信にも書いていた。
だが、まさかその中にBR法が入っていたなんて。両親がちらっと言っていたのを思い出す。
「試験的にBRを日本でやるんだって。岐阜は大丈夫かしらね」
「大丈夫だろ。全国で一校だって首相が言ってたし。こんな田舎の学校が選ばれるわけないよ」
お父さん。選ばれたんだよそれが。
私は可笑しくなって一人で笑ってしまった。傍からみたらただの怪しい人だろう。
だが見ている人など居ない。笑うのを止めた。虚しくなる。
機械の音。
音が、聞こえる。
起き上がって耳を澄ましてみる。
何かを切るような音。ウィーン。そんな音が聞こえる。
これは……何の音だろう。
音の出所は、黒板側の出入り口。
あの向こう側で、何かが動いている。
221 :1:2007/01/07(日) 20:15:12.61 ID:s936oG6t0
少し眠たい目をこすり、立ち上がる。
次第に恐怖という心が芽生えてきた。
……まさか、凶器か。
誰か居るのは間違えない。
誰だ。誰が居るんだ。
冷静に考えてみる。そして、あるものが頭のなかに浮かんだ。
チェンソー。それだ! チェンソーが動いている。
向こう側にいる奴は、私をチェンソーで切り殺そうとしてるんだ!
とっさにリュックの中をまさぐる。
鎌。ノコギリ。鉄やすり5本ほど。
……威嚇しよう。
こっちにも武器があるってことを知らしめてやるんだ。
そしたら相手も少しは驚くだろう。その時がチャンス。
相手は扉の下側に隠れている。だから、扉のガラスを割れば多少ダメージを与えられるだろう。
ガラスが相手に突き刺さる。そしたらこの部屋を出よう。出来ればあまり殺しはしたくない。
……チェンソーの音が耳障りだ。何となくむかつく。
私は鉄やすりを手に持ち、黒板の横の扉めがけて思いっきり投げつけた。
放物線を描いて鉄やすりは飛んでいく。少し大きめのやすりだったので飛んでいくか心配だったが、見事扉のガラスに命中した。
222 :1:2007/01/07(日) 20:15:53.92 ID:s936oG6t0
「うわっ!」
ガラスが派手な音を立てて割れる。それと同時に、ものすごい悲鳴が聞こえた。
「ぎゃあああああああああああ! ちょ、な、痛っ! ああああああああああぁぁぁぁぁ!!」
ガラスが刺さったにしては少し大袈裟すぎるリアクション。相変わらずチェンソーの音は鳴り続けている。
何かが飛び散る音。味噌汁をこぼしたような、そんな音も聞こえた。
少し怖くなった。悲鳴が大きすぎる。動物のような悲鳴が私の鼓膜を破きそうなくらい聞こえてくる。
……出よう、木工室を。怖い。
リュックを背負った。武器が増えたせいで、少し以上重くなっている。
チェーンソーの音は、まだ響いていた。
【18人】
225 :1:2007/01/07(日) 20:17:34.13 ID:s936oG6t0
<極端>
あー。
私、何やってんだろ。
大の字になって視聴覚室で寝ていた。
広々とした部屋なだけあって、開放感がある。
だが気分は一向に優れない。
直ちゃんの無表情な死体がまた頭に浮かんでくる。
……気持ち悪い。
私は起き上がった。お腹が減った。
さっきコッペパンは食べてしまった。水も飲んだ。もう何も無い。
また大の字になって寝転ぶ。
……奈央、何やってるかな。
ケイコ、アヤナ。何やってるかな。
生きてるかな。死んでるかな。
まだ、楽しくやってるかな。
もしかしたら、もう死んでるかもしれない。
……止めよう。欝になるだけだ。
226 :1:2007/01/07(日) 20:18:07.95 ID:s936oG6t0
扉が開く音がした。
私はゆっくりと体を起こす。
本当は逃げるべきなのだろう。銃を構えるべきなのだろう。
だが、何だか体が重くて思い通りに動かなかった。
目をこすった。
え、こんなことありえるの?
もう一度目をこすった。
それは消えない。
「……あ…あやな?」
扉の前に立っていたのは、高田彩那だった。
「あやななの?」
涙がこぼれそうになるが、堪える。
こんな久々の再開で、かっこ悪いところは見せられない。
嬉しかった。やっと友達と再会できた。
仲間割れしたこともあった。けど、仲直りした。
かけがえのない、私の友。
去年の9月にアヤナが転校してきて、気がついたら友達になっていた。
アヤナは人によく気を使う。そして優しい。たまに毒舌。
ガサツな私にはないものを持っている人だ。
「生きててよかった!」
「来ないでミキカ!」
アヤナが叫んだ。
私は面食らった。
227 :1:2007/01/07(日) 20:18:28.54 ID:s936oG6t0
「ど……どうしたの?」
アヤナは泣きそうな顔でこっちを見ている。
「とにかく、来たら駄目!」
「アヤナちゃん、何余計なこと言ってるの?」
静電気が流れたような音がした。
鈍い音とともにアヤナが倒れる。
「言った通りにすればいいのにさ」
扉から、また新たに人が出てきた。
……今度こそ死ぬかもしれない。
探知機のような小型機械をもったチホと、サーベルを持った奈々子ちゃんがアヤナの体を踏みつけて視聴覚室に入ってきた。
「ミキカちゃんは、良い人? 悪い人?」
奈々子ちゃんは微笑む。サーベルの血を舐めながら、微笑む。
229 :1:2007/01/07(日) 20:19:09.83 ID:s936oG6t0
<直感>
「喉渇いた」
遠藤の声で目が覚めた。「喉渇いた」という言葉で目が覚めたのは生まれた初めてだ。
「……水切らしたのかよ」
「いつの話してるのコウタ。もうとっくの昔に切らしてるよ」
時計を見る。4時ちょっと前。外は薄暗くなり始めていた。
遠藤が空のペットボトルを指差している。
「水汲みにいかない?」
「危なくないか?」
「何言ってるのコウタ」
チッチッチと言いながら、遠藤は指を振った。
「その便利マップは何の為にあるのさ」
「あ……」
そうでした。このマップがありました。1本とられた気分。遠藤は誇らしげに微笑んだ。
「じゃ、行こっか」
「え? 僕も行くの?」
もう一眠りしたい気分だった。
あまり睡眠をとっていないので、安全な今のうちに寝ておきたかったのだ。
だが遠藤は残酷である。
「当たり前じゃん。女の子を護衛するのは男の子って昔から決まってるんだよ」
そんな決まり聞いたことないぞ。
232 :1:2007/01/07(日) 20:20:25.46 ID:s936oG6t0
でも、遠藤一人で出て行ってそのまま殺されるってのは……嫌だな。
後味悪いし、仲間は一人でも多いほうが良いもんな。
「よしわかった。僕が遠藤の周りに敵がいないか調べるよ。それなら危なくないだろ? 安全に水汲めるだろ?」
「コウタさ……もし誰かが襲ってきたら戦える武器あったっけ?」
「う……」
そういえば、無い。
敵が襲ってきたとしても対応できない。津波が来るとはわかっているけど家に居るのと同じだ。
これじゃ、水汲みどころか生き残るのが不可能になってしまう。
「そ、そういえばさ。遠藤の武器って何なんだよ?」
「遠藤の武器?」
自分のことを自分の苗字で呼んだよな遠藤って。珍しい。
「催涙スプレー」
「何とも微妙だな」
しまった。思ったことがそのまま口から出てしまった。
銃とかナイフとかそういう武器じゃないのか。使えない。
……でも無いよりはましか。少なくともDSで殴るよりは使えるだろ。
「よし。じゃその催涙スプレー持って水汲みに行こう」
「おっけー。コウタ、遠藤がピンチになったときは助けてよ」
「逆に僕が助けて欲しいくらいだ」
マップにちらっと目を通す。
35分の18。丁度半分くらいが死んでいる。
234 :1:2007/01/07(日) 20:21:13.06 ID:s936oG6t0
結構ペースが早いな。3階が禁止エリアになったから、2階で殺し合いが勃発してるのかもしれない。
2階のマップを見ると、瞳と小原の番号がついた点が保健室の前に居るのが目に入った。
……異色のコンビだな。
「おい遠藤、小原と瞳が一緒に行動してるみたいだよ」
何気なく遠藤に声をかけた。
ドアの前で、遠藤が固まった。
少し驚く。僕、なんか悪いこと言ったかな?
「……コウタ」
さっきまでとは、確実に声色が違う声で遠藤が言う。
「2階行くよ」
「は?」
「2階行く」
遠藤は僕のほうを向いた。
その目は、怒ったときの中山先生の目に似ていた。
抗議しても聞いてくれなそうだ。
「……小原のとこに行くのか?」
「早く行くよ」
遠藤はドアから出た。
僕も慌ててそれに続いた。
5組から出る時、片手に持った地図をまた見た。
保健室の前の点が、一つ消えていた。
【17人】
223 :1:2007/01/07(日) 20:16:55.69 ID:s936oG6t0
ちょwwwwwwwwww
224 :1:2007/01/07(日) 20:17:20.39 ID:s936oG6t0
すみません半分から下のファイルがありません
完結してませんこれ
209 :1:2007/01/07(日) 20:08:23.44 ID:s936oG6t0
追記:この中に出演してる俺は誰だかわかるか?
213 :御所:2007/01/07(日) 20:10:10.41 ID:OREBbwCT0
>>209
わからん。誰?
216 :1:2007/01/07(日) 20:12:03.31 ID:s936oG6t0
>>213
男の中であんまり活躍してないやつ
誰かわかったらすごいな…
230 :御所:2007/01/07(日) 20:19:11.38 ID:OREBbwCT0
マジかww
PSPの人か、地図持ってる人?
233 :1:2007/01/07(日) 20:20:49.24 ID:s936oG6t0
>>230
屋上で目覚めた人です。
238 :御所:2007/01/07(日) 20:22:32.05 ID:OREBbwCT0
>>233
なるほど。
242 :1:2007/01/07(日) 20:25:30.45 ID:s936oG6t0
>>238
今でも俺はマミと呼ばれている
その1 その2 その3 その4 ←いまココ
その5 その6 その7 その8
PSPだと思ってた
お前どこ中だよwwww知り合いの予感ww